特定非営利活動法人ぴゅあさぽーと

特殊教育学会神戸大会でのシンポジウム開催報告(2026.9.20)

2026.10.19 お知らせ

テーマ「小中学校の多様な子供たちへの支援」~外部資源を活用した支援~
神戸国際会議場

ぴゅあ・さぽーとは、9月20日(日)に日本特殊教育学会のシンポジウムに参加し、発表を行いましたので、内容について報告します。

特殊教育学会神戸大会でのシンポジウム 画像

【シンポジウム企画の趣旨】
 小中学校における特別な支援を必要する児童生徒への対応は工夫されているものの学校だけでは十分ではない実態があります。今回は、大学等の研究者による発達障害の子供への支援の実際、不登校の教育支援教室やひきこもり支援の公設民営のNPO法人の取り組み、研究者と協力して支援員を派遣しているNPO法人の取組について話題提供をお願いし、外部資源を活用の実態と今後の在り方について議論を深めました。
企画 明官茂(「ぴゅあ・さぽーと」理事)

小池報告(東京学芸大学)
 発達障害のある小学生の保護者から、本人の実態に応じた支援の要望があるが学校へは受け入れられていない実態があることが報告されました。現在の通常の学級では学習困難のある子供たちが自分で学力を獲得していくことが困難な背景があります。
 その状況に対して、大学生を活用したリモートによる支援が有効ではないかとの報告がありました。例えば、岩手県山田町では複数の大学と連携して、昼休み(教育課程内)や保護者と連携した家庭でのリモート支援を行い、全ての子供を学びから分断させない取り組みを進めています。

野田報告(非営利活動法人「み・らいず2」)
「み・らいず2」は、学校内居場所や不登校の教育支援教室やひきこもり支援の公設民営での運営、個別学習塾の自主運営、居場所型や学習支援型等で支援してきました。 2024年からは、通信制高校のサポート校を開設しています。翌年には中等部を増設し、学習に向かう習慣や学び方、家から外にでることの習慣化を実践しています。中等部は、より公教育との連携が必要になるため、教育委員会や地域の中学校との接点も試行錯誤で実践しています。
学びが多様化し、こどもたちの選択肢が増えてきた中だからこそ、こどもの成長をどのように学校と情報共有するのか、改めて「こどもたちにどうなってほしい」そのためにどんな支援、どんな連携が必要なのかを検討する必要性を感じています。

松尾報告(非営利活動法人「ぴゅあ・さぽーと」)
NPO法人ぴゅあさぽーとでは平成20年から品川区、平成26年から港区、令和2年から渋谷区において特別支援教育支援事業を受託し、幼稚園および小中学校への支援員配置を行ってきました。近年、支援ニーズの多様化とともに人材確保が困難となり、支援員のバックグラウンドも多様化しています。当法人では令和8年より、支援員が隙間時間を活用して学習できるよう、1本10分程度の動画による研修講座を複数制作し、オンライン配信を開始しました。動画の内容は、①特別支援教育に関する講座 ②基本講座 ③勤務する園・学校・学級別講座 ④障害別講座 ⑤中級向け講座の5つのカテゴリーです。

【研修動画の効果について】
・初めての勤務に対する不安が軽減され、安心して勤務を始められるようになったことで、早期退職者の減少につながりました。
・勤務や支援における禁止事項を明確に伝えることで、不適切な対応の予防と苦情の減少につながりました。
・継続的に研修動画を配信することで、支援員には自身の知識や理解を常に更新していく必要があるというメッセージを伝えることができました。

【今後の研修・支援体制の改善について】
・支援員が実際に困る場面を取り上げ、具体的な対応方法を学べる動画を作成していきます。
・動画研修に加え、事例検討、支援相談会、巡回訪問を組み合わせ、実践力と勤務上の安心感を高めていきます。

瀧本報告(福島県特別支援教育センター)
福島県でも通常教育の多様な教育的ニーズに対する対応は大きな課題になっています。今年度から3年間小中学校の通常学級に在籍する学習面で困難さがある児童生徒に、認知特性に焦点を当てて教育研究を行うことにしました。4月からこれらの研究実践を行ってきた中で、基礎的環境整備に当たる学習者主体の授業づくりや学級環境づくり等の小中学校の教員への理解浸透が課題だと考えます。
今回の討論では、小・中学校の多様な子どもたちへの支援を行うなかで、小・中学校(校内組織・体制)に、もたらしている効果と課題は何か、特別支援学校のセンター的機能に外部資源として期待することは何か、について確認したいと思います。

大関報告(十文字学園女子大学)
 中央教育審議会ワーキンググループの議論では、キーワードとして重層的な支援が示されました。現在の課題は、障害種ごとの配慮事項に対してどれだけ教員が理解し実施できているかであると思います。通級による指導対象者の増加傾向が続いています。各学校では子供が様々な困難に陥っている背景があり、それに着目した工夫をすることが通級指導の教員に求められていると思います。
 外部の支援機関と学校に共通する課題は専門性ですが、学校と外部機関が連携するアイデアや実現に向けた課題は何かについて議論を深めてほしいと思います。

近藤報告(文部科学省)
これまでの話題提供の共通点は、学校だけでは対応が難しい多様な教育的ニーズに対して、地域の専門人材や関係機関との連携によって子供の学びや育ちを支えていることです。課題としては、通常の学級における多様性・包摂性を尊重した学習者主体の授業づくりを基盤としながら、個別最適な支援の充実を進めることだと考えます。その際、学校内の取組だけでなく、外部資源との連携をどのように持続可能な仕組みとして構築していくことです。
議論したいことは、以下のことです。
小池提案については、「専門的知見は重要である一方、その成果を通常の学級にどう還元するのか、担任が活用可能な支援方法にどう翻訳していくのか。」、「個別支援で有効だった取組を学級全体の学びに生かすとしたら何が必要だと考えられるのか。」、「ICTや遠隔支援は今後どのような可能性を持っているのか。」
野田提案については、「学校との情報共有、学習評価、進学・就労への移行について、
・学校との情報共有でうまくいった事例は何か。必要な要素は何か。」、「支援機関と学校が共有すべき「子供の姿」とは何か。」
松尾提案については、「支援員の役割の明確化、研修機会の確保、専門性向上に向けた取組みについて」、「オンライン研修によって実際の支援行動はどのように変化したのか。」、「支援員に必要な資質・能力をどのように整理しているか。」

【全体討論・意見交換】
小池氏:
専門性の担保は難しい課題です。子供の発達の段階においてどうするかは、学校との調整役としてセンター的機能が活用できるとよいと考えます。センター的機能は小中学校の教員に必要な情報を与えたり、調整することが中心ですが、外部資源の活用についても調整していく必要があります。そうすれば学習活動の充実にもつながります。
小中学校への外部支援の効果と期待はどう考えるかについては、外部支援により学校では対応できなかったことについての定着が見られるかどうかが重要です。外部からの情報を学校は活用してると思いますが、その支援が学校の組織・体制にどう定着しているかどうかは現時点では答えづらいところです。

野田氏:
学校への情報共有では、毎月「み・らいず2」で行った学習の様子や特別活動の様子を報告しています。あわせて仕事の体験等も説明しています。学習支援で読み書きについては成長が見られますが、学校での授業への取入れは難しいと思います。しかし、宿題等に取り入れてもらえると活用できると思っています。
大阪では、学校に保護者や外部の人が入る担当者会議があります。このような会議をできるだけ開いてほしいと思います。そうすることで学校での子供たちの様子が私たちに伝わってくるのです。進学・就労への移行についても、どんな就労の場があるのか、就労に必要なスキルなどの細かい情報が学校に伝わると、子供の特性を生かした仕事につなげることができると思います。行政や学校と背景共有ができることが大事です。支援の枠が決まっているとありがたい面もありますが、その枠を超えた支援も可能なのかを探していきたいと思っています。

松尾氏:
支援員の配置の効果は安全管理、精神的フォローがあります。地域によっても違いがあり、東京では、外部支援事業所としては学校との連携が難しいと感じています。若手の教員も増えるなど学校側の事情もあり支援員へ適切な指示をすることも難しいとも思うので、支援員の研修を取り組んでいます。教室では教員と支援員の関係が曖昧なので、独自の判断で動くなど支援員が不適切な対応をしてしまうことも課題です。特別支援学校のセンター的機能への期待は、支援員を含めて支援してほしいことです。支援員は様々な人がいるし、複数の団体から派遣された支援員が一緒に働いていることです。支援員の資質と学校との連携のアイデアについては、専門性向上だけでなくコミュニケーションの向上も大切だと思います。
フロアーから出された意見
元校長先生:通常学級の担任の先生が特別な配慮ができないと思います。どんどん、LD教室に入れることが多い実態もあります。学校をサポートする体制は頑張っていますが、現実的に学校の体制が不十分です。文部科学省としてサポートする、あるいは大学の教員養成のカリキュラムを今まで以上に充実していくことが必要です。
元校長:特別支援教育を通常の学校で充実するためには外部機関の支援が不可欠です。持続可能にするためには、教育委員会が中心となって外部機関を連携していくシステムが必要であると考えます。
【文責】明官 茂(ぴゅあ・さぽーと)

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